自動車業界がAppleの電気自動車に抱く考えが、iPhone発売時のそれとよく似ており、非常に興味深い。
BMWの最高財務責任者であるNicolas Peter氏は、Bloombergの取材で、Appleが電気自動車市場へ参入する計画を質問された際に「私はとても安らかに眠っている」という表現を使い、なにの脅威をも感じていないことを示した。
Peter氏は、BMWが非常に強い立場にあり、引き続き業界をリードする地位を維持したいという考えを伝えている。
同様に、BMWの最高経営責任者であるOliver Zipse氏は、Peter氏と類似する反応を示していおり、メーカー内で亀裂が生じていることもなさそうである。
駆け抜ける喜びを提案するBMWは、もしかすると電気自動車という半ば家電製品の市場においても他社を寄せつけない魅力的な秘策を持っているのだろうか。
なお、Zipse氏が発した内容は、Apple Carそのものに対してではなく、電気自動車を販売するテスラに向けた発言で、電気自動車の分野においても今後脅威にはならないとお考えのようだ。
現在テスラは電気自動車の分野で一歩先に進む立場だが、ほかの自動車メーカーが電気自動車の分野へ力を入れつつある現在、テスラの成長が継続的には続かない可能性があることを伝えている。
BMWの足下に及ぶメーカーがないといわんばかりの考え方。もし、これらすべてが、Apple Carの製造をBMWが担うと考えた場合はどうなのだろう。
CNNは、Apple Carの製造に関する内容を取り上げた際に、ドイツの銀行MetzlerのアナリストであるJürgen Pieper氏の言葉を引用した。
Pieper氏によると、BMWは、Appleへ扉を開きたくないと考えるほかの自動車メーカーとは異なり、自動車分野への参入を好意的に見ている可能性を伝えている。同氏は、それに続けて、Appleが自動車事業に参入することを認めなければならないならば、我々(BMW) がほかの誰よりもパートナーになりたいと考えているかもしれないと前向きな可能性についても触れていた。
Appleを脅威と感じず、独走して逃げ切る構えの電気自動車メーカーも直に衰退する可能性を示唆する発言が意味している理由。Apple Carのパートナーとして、BMWが契約に踏み切ることを前提として発言した可能性は否めない。
AppleのCar Keyシステム(デジタルキーPlus) でもお分かりいただけるとおり、現在AppleとBMWの関係は非常に良好である。
客観的に見れば、BMWにとって、Appleとの提携は製造数の底上げにしかならない可能性がある。しかし、BMWは、競争相手が増えることにより、ほかの人のやる気を引き出すことに貢献すると捉えているようだ。
自動車を愛する者は、製造の担い手が変わるだけで、完成する自動車のフィーリングが変わることを知っている。日本車にしてもイギリスで製造された車両には、日本で製造されたものには感じられない“しなやかさ” を感じ、ドイツのメーカーが作るドイツ車にはガッチリとした安定感と手応えを体で感じる。BMWが完成させるApple Carを拒む自動車ファンは、おそらくいない。このまま明るい話が聞ける未来に繋がることを願うばかりである。