IQOS3とIQOS3MULTIはフィリップモリスから登場した新型アイコス(IQOS) だ。新型IQOS3は、同社が販売するマルボロやヒーツといったヒートスティックを使用する事のできる電子機器である。
アイコスはたばこその物ではなく、機器が人体に影響を与えることはないが、20歳未満の者が使用することを法律で禁じられている製品である。
加熱式たばこであるヒートスティックを使用するために開発されたアイコスは、日本での販売を2015年9月から地域限定で開始した。副流煙を排出しないことや、従来のタバコと比べて9割の有害物質を低減したことで、肩身の狭い日本の喫煙者に受け入れられて瞬く間に日本中へ浸透をした。これほどまでの販売台数を記録しているのは世界的に見ても日本のみのようだ。
そんなアイコスを販売するフィリップモリスは、世界に先駆けて日本で新型アイコスの発表を行い、2018年11月15日より販売を開始する運びとなった。
初代アイコスの登場から3代目を迎えて新たに登場したアイコスの名称は、IQOS3とIQOS3マルチという2種類となる。この新型では、iQOS2.4までに不満の多かった内容の改善も行われており、加熱が完了して喫煙の準備ができた際のお知らせバイブなども仕様に盛り込まれている。
IQOS3の使用感
アイコス3は、初代から受け継いだ分離型を採用しており、本体からホルダーを取り出して使用するスタイルが馴染み深い仕様となっている。
旧型のアイコス2.4と比べて幾分細くなった本体は、手に握ると収まりのいい幅にリサイズされており、アールがちょうどいいフィット感を与えているのが第一印象だ。今までのアイコスと一番異なる変更点はフタの開閉機構で、旧型まではボタンを押すと 上へフタが開く機構を採用していたが、新型のアイコス3では 本体の横側がフタになっており、フタの下の方に設けられた盛り上がりよりも更に下側付近を押し込むことで、フタが横に せり出してくる構造を採用している。盛り上がった突起付近を支点として下部を作用点とし、力点となる上部が開閉する仕組みだ。このふたの開閉にはカチッとしたクリック感はなく、構造としては壊れにくい単純な物が採用されていることがうかがえる。
本体から取り出して使用するホルダーは、底部の充電端子が磁石となっており、本体へ挿入すると吸い付くように本体側へ固定される仕組みが取られている。この磁力での固定は相当力強い物で、手首にスナップを利かせて勢いよく振り回しても本体からホルダーが外れることはなかった。
磁力で固定されたホルダーは、引き抜く際に架かる力に負けないために、ホルダーのフタ自体にも構造強化が施されており、フタを押し上げてヒートスティックを取り出す際や 元に戻す際にはシッカリとしたカチッと感を得ることができる。
なお、アイコス2.4まで採用されていたホルダー充電不足を示す赤色LEDは廃止されており、ホルダーの充電ができていない状態では ホルダーのLEDが点灯しないように仕様変更が施されているようだ。ただし、何かしらの故障がある場合は赤色LEDが点灯する。
アイコス3で感心した点は、フタを閉めずとも本体にホルダーが挿入された時点でホルダーの充電が開始されることだろう。シッカリとフタを閉めなくとも次の使用に備えてくれる事は、何かに没頭しながらアイコスを嗜むスタイルの方にとっては とても有り難い仕様だ。
しかし、その本体のフタには少し不満がある。旧型までのアイコスでは、フタの部品が破損してしまうなどの問題を抱えていたため、アイコス3では横開きを採用したのではないかと思うが、残念ながら開閉角度が狭すぎるために手袋を履いたままでのホルダー取り出しは困難だ。また、手先の乾燥する時期には指のグリップが足りず、取り出す際に思わずホルダーを落とし欠ける場面を何度か経験した。しかし、だからといって肩に力を入れてホルダーを取り出そうとすると、ホルダーのボタン部分が本体に引っかかり、壊れやしないのかと不安がよぎる場面もあった。恐らく今後の改善点に挙げられる部分ではあると思うが、慣れていないと不意に落下させて破損しかねないので注意を払う必要があるだろう。
また、このアイコス3に関しては、届いて早々初期不良に見舞われてしまった。本体の電源ボタンを長押し、アイコス本体を休眠から呼び起こそうとしたところ、いくら長押ししても電源が投入されなかった。てっきり充電がない物だと勘違いをして充電ケーブルを接続して充電したものの、それでも電源を投入することができなかった。フタを開きホルダーを挿入したところ、本体の電源は入らないままホルダーの充電は開始されている始末。もし同様の症状でアイコス3の本体電源が入らない現象に遭遇してしまった場合は、落ち着いて何度も何度も電源ボタンを長押ししてみよう。接点不良か何かは定かではないが、私の場合はそれで解決することができた。
IQOS3MULTIの使用感
アイコス3マルチは一体型のスリムボディを採用しており、従来のように本体からホルダーを取り出す手間を省いた製品だ。一度の充電で10本のヒートスティックを連続使用する事ができる。気になるバッテリーの残量は、底部に設けられたLEDインジケーターで表示することができ、それは待ち受けや使用中に関わらず、電源ボタンを一度押すことでバッテリー残量を表示してくれる。
見るからに大きくかさばるように見受けられたアイコス3マルチは、実際に使用をしてみると 大きすぎることもなく小さすぎることもない、ちょうどいい大きさだ。無駄に肉をそぎ落とすようなことはせず、十分な厚みを持たせているおかげで重みを感じることもなく、しっとりと手に馴染むように仕上げられたデザインは見事だ。
本体上部のフタをクルッと回し、ヒートスティックを挿入して電源ボタンを長押しする。たったそれだけでアイコスを嗜むことができる。吸い終わりには、電源ボタンから上の部分を持ち上げることでヒートスティックを取り出すことができ、そのフタは磁力により所定の位置に戻り固定される。連続して吸いたければ、新たにもう一本を挿入して電源ボタンを長押しする。
一言で、便利だ。初代アイコスや前の型であるアイコス2.4を使用していた方なら お分かりいただけると思うが、無駄にかさばる本体と ホルダーを本体に戻す手間は本当に面倒な存在だった。その大きな不満点が一気に解消されたアイコス3マルチは、充電器やモバイルバッテリーさえ近くにあれば 不満が漏れることはないだろう。そう思っていた私は大きな欠点を見逃していた。実際に使用をしないと分からない不満点が、アイコス3マルチには存在したのだ。
気の知れた喫煙をする仲間と、わいわいガヤガヤと楽しむにも ちょうどいいアイコス3マルチは、新しく登場したヒーツをお供にするのも話題性があっていいかなと想像していた矢先の出来事。
なんということだろう…。もう私はアイコス3マルチをお供に外出することはないかもしれない。
外出先で使用するには大変不満のある製品だ。肩を揺らして苦笑いをしたことは久しくなかった。これから購入をなさる方には、是非耳に入れておきたい。
それは、アイコス3マルチから突出した電源ボタンの弾力が不足している事により起こる現象だ。アイコス3マルチとヒートスティックの箱を重ねて持った際に、電源ボタンがヒートスティックの箱側に向いていれば、ボタンが圧力に負けて押し込まれてしまうことで意図しない加熱が勝手に始まってしまう。この勝手にボタンが長押し状態になり過熱される現象は、ジーンズのポケットや鞄の中でも確認できた。10本しか吸うことができないバッテリーが、その現象により3回も無駄に使用されてしまったのだ。
利点が増えることで何かしらの欠点が出てくる事は致し方のないことだとは思う。だが、これでは外出する際の お供に持ち出すことができない。スーツの胸ポケットなど、加圧が少ないところに収納できる方なら問題ないだろう。しかし、アイコス3マルチとヒートスティックの箱を合わせて持ち、移動したり会話を始める私の様なユーザーには不向きとしか言い表すことができない。
オススメは使用者に左右される
テスト期間としては短い2日間ではあったが、その経験から大きな収穫があった。私がもしお勧めするならば、「移動に適したアイコス3」、「デスクに適したアイコス3マルチ」という位置づけで推すだろう。
アイコスの直営サイトから アイコス3とアイコス3マルチのセット品を購入することで割安に購入することができた。このセット価格がいつまで続くものなのか期間は定かではないが、かなりの値引き額で購入することができるため、使い分けを考慮してセットで購入することも検討してはいかがだろう。