iPhone10周年記念モデルとして登場したプレミアムモデルのiPhoneに与えられた名前は「iPhone X(アイフォーン・テン)」。
ひとつ先を見据えた このiPhoneは、使えば使うほど納得のゆくできばえである。
iPhone8との“基本性能”の違いを見いだせるユーザーはまず少ないだろう。今回iPhone 8とiPhone Xを購入することになり、同時にアクティベートを行い、同時に必要と思われる作業を熟して使用できる状態にしたのだが、これと言って処理が早いわけでもなく、たんに見た目が異なるという点以外には何も喜びを見いだせなかった。「なぜこれが高いのか。(ディスプレイやその周辺が高い)」という疑問しか浮かんでこなかった。
しかし、携帯キャリアのショップから帰り、じっくりと使っていくうちに、徐々に所有者の心へ“ごく普通に歩み寄るiPhoneX” の存在に気付いた時、全身に電気が走ったのである。
全てが普通。強いて言えばホームボタンがないだけの違いが最大の違和感でもあるiPhone Xは、今までのiPhoneには感じられなかった次の次元を感じられるiPhoneに仕上げられている。“普通” という言葉のレベルが違うのだ。
まず、ディスプレイにはOLED(有機ELディスプレイ)が採用され、今までiPhone使われてきたディスプレイよりも映し出される画面にシャープな印象と白黒のメリハリの良さが目立つ。一般的に有機ELディスプレイは青白い印象を受けやすいが、iPhone Xに採用されているディスプレイには その強い青みや強い色合いをあまり感じることができない。これは恐らく使われているディスプレイの選択というよりは、それを制御しているソフトウェアの出来の良さから来ているのではないだろうか。
音にしてもそうだ。着信音を選択している時に気付いたのだが、臨場感が違う。様々な種類の音楽を再生したところ、その場にいる臨場感とまでは行かないものの、「これをこのiPhoneが奏でているのか」というような立体的な豊かさに包まれるのだ。
iPhoneを手に持ち音楽を再生すると、まるで手の上の空間に音楽が浮いているような錯覚を得ることができる。なんとも不思議な印象を受ける。これはiPhone8も同じ構造なのだが、メインのスピーカー(送話口横)とは別に、通話時に相手の声が聞こえる受話口からも音が出ていることで、それがとても良好な作用をしているようだ。メインスピーカーからは中高音を出し、受話口からはツイーターの様に(若干) 高音に近い中音を出している。
iPhone8とiPhoneXで同じ曲を同時に再生しても歴然の差が生まれ、iPhoneXをメイン音源として、iPhone8がそれを補うような形で豊かな音を奏でてくれる。もし同じスピーカーが採用されているのであれば、この違いは重量の違いから来る物(出力物の重量で音は変わる) なのかもしれない。自然なトータルバランスに優れたソニー(X) と、高音の強調を得意とするカロッツェリア(8) の差くらいを感じる事ができた。
iPhone8とiPhoneXを比べた時、やはり大きく異なる重みの違いを実感することができる。これはiPhoneXを購入検討するに当たり、とてもネックになる要因の一つかもしれないが、所有して自然と寄り添うiPhoneの存在を考えた時に、先に書いた2つの違いだけをとっても iPhoneXを選択するに値する価値があるのではないだろうか。
軽くてコンパクトで携帯性がいいiPhoneを選ぶ習性があった私の口からこんな言葉が出てくるとは思わなかったが、重いiPhoneXを購入して本当に良かったと思っている。
最低でも2年間は生活を共にするiPhone。未練を残す選択をしてはならない。全てにおいてバランスの良さが際立つプレミアムモデルを一度体感すると、もう後戻りはできないかもしれない。