Appleが発表を見込む電気自動車のApple Carは、ヒュンダイと緊密に調整を整えた上で、欧州のPSAが共同で製造する可能性がある。
PSAとは、フランスに拠点を置くPSAグループのことで、自動車の製造や販売を行う多国籍企業である。プジョー・ソシエテ・アノニム(プジョー株式会社) の頭文字がつけられたPSAは、元を辿れば1976年、プジョーがシトロエンを傘下に収めたことで誕生したグループである。
今回の情報は、アナリストのMing-Chi Kuo氏が出所である。Kuo氏によると、Appleは、ヒュンダイのE-GMPプラットフォームを用いてApple Carの構築に着手する。
E-GMPとは、電気自動車の土台として、ヒュンダイが昨年12月に発表した最新の基礎である。
このプラットフォームには、モーターは前後に1つずつ、最大で2つのモーターを採用することが可能で、リアサスペンションにはマルチリンクサスペンションが与えられている。正確には、スポーツカーや高級車に用いられることの多い5リンクサスペンション。
バッテリーが収まる部分は、前輪と後輪に採用された統合ドライブアクスルの間、ちょうど乗員スペースの真下に平たく収まる形となるようだ。バッテリーの固定具からすると、このプラットフォームに採用されるボディフレームは、一般的な乗用車のフレームへ採用されるモノコックボディになる可能性が高く、バッテリー以外の重量物を軽量に設計できる可能性がある。
充電システムや、その他を含むローリングシャシコンポーネントで構成される電気自動車プラットフォームは、以前紹介したCanooのシャシーフレームに似ているように感じる。
しかし、Canooのシャシーフレームは、前輪から後輪までを一体成形としたラダーフレームがベースである。
ヒュンダイのE-GMPプラットフォームの性能は、最大航続可能距離が約500km。この航続可能距離を可能にするバッテリーシステムは、18分以内に最大80%の充電が可能な最新のシステムである。
そして運動性能である。E-GMPプラットフォームを用いた車両は、どうやらポルシェより速いようだ。450馬力(331kW) で武装するポルシェ911 カレラ4S(現行992型) が、100km/hまで加速するのに要する時間は3.6秒。それに対して、E-GMPを採用した自動車の加速時間は3.5秒未満である。
速度に関しては、最高260km/hに留まるが、実用域での加速力がスーパーカーの名門に真っ向から勝負を挑める能力と考えると非常に優秀だ。
充電場所の問題に関しては、今後問題が軽減していくようだ。PSAグループは、2020年10月1日に電気自動車の普及を加速する目的で、まずは手始めに欧州の工場を含めたすべての施設に、電動自動車向けの充電ステーションを設置すると発表した。
欧州では、電気自動車の販売以外ができない日が近づいており、今後はこうした充電ステーションが様々な場所でお目に掛かることになるはずである。
また、PSAグループは12月にFCAとの経営統合を進めており、欧州委員会は条件付きで統合を承認したとも発表されている。FCAとは、フィアット・クライスラー・オートモービルズの略である。なにかを察していただけただろうか。
ヒュンダイのプラットフォームを使用し、アメリカでの生産はヒュンダイ傘下の起亜が担うとの情報もあるが、PSAとFCAの条件付き統合を加味すると、今後の世界展開は方向性を少々変更する可能性が少なからず出てきている。
Apple Carの登場時期について、Kuo氏は、予測されている2025年という計画が難しいものであると伝えている。
その理由はリードタイム。現在、Appleが新型iPhoneを販売する場合、仕様の定義から量産までに約18ヶ月から24ヶ月掛けている。土台を持つiPhoneのようなデバイスですら2年という時間を要する場合があり、これから新規に始めるApple Carの発表を2025年までに推し進める場合、販売経路の確立や、その後のアフターサービスなど、多くの難題をタイトなスケジュールで決めていく必要が出てくる。